どうもQ一郎です。
コロナがやばいですが、Q一郎は元気です。
「僕らはみんな生きている」進めていきます。
前回僕らはみんな生きている[1-1]
前回僕らはみんな生きている[1-4]
宿舎までの道中
道中の寄り道から中井戸は言葉を発さない。上司の不穏な態度に高橋はどうでもいい質問を投げかけていた。
高橋「見たところ公衆電話はないみたいですねぇ」
高橋の言葉もむなしく中井戸は一向に口を開かなかった。
気まずい空気が流れる車内もやっと終わりを告げ、宿舎へと到着する。
到着した途端に高橋は中井戸に聞いてみた。
高橋「あ、あの僕なにかお気に障ることをいいましたでしょうか?」
中井戸「なんで?」
高橋「さっきからずっとお静かなので。。。

中井戸「そうか?」と発した中井戸はにやりと笑う。
予期せぬ中井戸の反応に高橋は血の気の引いた表情を見せたが、構わず中井戸は話し出した。
中井戸「そうかそうか、すまんすまん。
ずっと考え事してたもんでな、いや悪い悪い、悪い癖なんだな、俺の。
まぁ気楽に行こうじゃないか。
遠い異国で肩ひじ張らずにな。」
大げさに肩をはたかれた高橋は「はぁ・・・」と気のない返事しかできなかった。
宿舎到着
宿舎につくと現地人のメイドたちが出迎えてくれた。イスラム系というメイドたちはみな美しく、もてなされた高橋は中井戸との気まずさなどすぐに忘れ、鼻の下を伸ばした。
宿舎の中に入ると広さに驚いたが、すかさず中井戸が不動産業者のように説明する。
中井戸「4ベッドルーム、3バスルーム、230㎡のプール付き
家賃が3万タルカだから、6万円ちょっとだな」
あまりの安さに驚く高橋だったが、この国のサラリーマンの平均月収が1万円足らずと聞いて、自身の待遇の良さに優越感を感じずにはいられなかった。
高橋「中井戸さんはここにお一人でお住まいですか?」
中井戸「娘が中学受験でね、単身赴任だ、今のところ。」
広々とした1室に高橋は案内され、ここを使ってくれと言われる。高級感のある作りに圧倒されたが中井戸の説明は日本では聞きなれないものだった。
中井戸「電気ガス水道完備だ。もっとも水道は半期に一度コレラ菌が入ってるし、停電も時報がわりだがな。」
初めての異国で聞いた初めての単語に、現実感を少し欠いたが、短期出張が根本にある高橋はすぐに前向きにとらえた。
高橋「この電話、国際電話OKですよね?」
中井戸「5、6時間で通じりゃラッキーだ。」
高橋「 5、6時間 ・・・」
中井戸「あ、いや2、3時間てとこかな、まぁこの国は何につけ、気長に、気長にねーそれが一番大事。」
急に優しい口調になった中井戸に、高橋は少し不安を感じたが、すべて短期出張の間だけの少しの我慢。気に留めないまま、日本にいる彼女に向け国際電話をかけた。
差別じゃねぇぞ、区別だ!
中井戸が言ったように国際電話は簡単につながるはずもなく、ただ時間だけが過ぎメイドたちがおやすみなさいと高橋に告げていった。
何の気なしにメイドの行方を見ていた高橋はメイドたちが進んでいく行く寝床を見て、自身の環境との違いに驚きを隠せなかった。
高橋「ずいぶん僕らの部屋と違うな、こっちの家にいっぱい部屋が余ってるのに。」
メイドたちが入った掘っ立て小屋を憐れんだ高橋は、独り言を装って、近くにいた中井戸に聞こえるように呟いた。
中井戸「奴らにゃ、あれでも上等なねぐらだ。
忠告しとくがな、偉そうにしてないと舐められるぞ、甘い顔してるとどんどんつけあがる奴らだ。」
平等を美徳として学ばされた高橋は中井戸の意見がピンとこなかった。それどころか反目する表情と意見が口をつく。
高橋「なんか、そういうのって、、、」
遮るように中井戸は言葉をかぶせる
中井戸「差別じゃねぇぞ!区別だ!!生活のフォーマットだ。
以上!!おやすみ、良い夢を。」
中井戸はそういい放つと自身の部屋へと向かっていった。
国際電話がつながるのを待つ高橋
国際電話がつながるのを待っていた高橋だったが、申し込みをしてからすでに5時間が経過していた。ふと呼び出しのベルが聞こえたような気がして高橋は電話のあるリビングへ赴いた。
気のせいかとも思いながら、新鮮な環境に目がさえている高橋はすがるようにリビングへ向かう。リビングにつくと運転手のセーナが一人で酒を飲みながらテレビを見ていた。
高橋「夕方に国際電話の申し込みをしたのですが、今、電話のベルなりませんでしたか?」
セーナ「Not at all. タバコない?」
生真面目な高橋が部屋に置いてきたタバコを取りに戻るというと、ないならいいとセーナは言った。続けてセーナはこんな時間に眠りにつかない高橋に自分が飲んでいる酒を進める。
高橋「これは中井戸さんのお酒ですね?中井戸さんは怒るでしょう?」
セーナ「中井戸は睡眠薬飲んでるから、今頃グッスリだよ。」
高橋「私が密告するかもしれませんよ?」
セーナ「あんたはそういうことしないだろ?」
セーナ
高橋「イスラム教徒が酒飲んでいいのですか?」
セーナ「私はイスラムじゃないよ、カソリック。」
二人は楽しく酒を飲みながら、少しづつ距離が近づいていく。
高橋はすぐに打ち解け、警戒していたセーナにあなたは話しやすい人だと伝える。
そうだろうとセーナは笑顔で返した。
高橋はさらに踏み込んだナイーブな問いかけをする。
高橋「中井戸さんは少し変わった人ですね。少し理解しにくい。」
セーナ「最近、情緒不安定みたい。よく殴られるよ、アル中寸前だしね。」
高橋は少し考えた後、自分には理解できないと説明した
高橋「こんなのどかな場所で、広くてきれいな家に住んで、面倒な上司はいなくて、美人なメイドに囲まれて。なぜそんな状態になるのでしょう?」
美人なメイドと高橋が言った瞬間から、セーナは怪訝な目で高橋を見つめていた。
美人なメイドの中にセーナが含まれていないことを慌てて気づいた高橋は取り繕うように言葉を並べる。
高橋「あ、もちろん。あなたも美しいです。」
セーナ「テイテイ(おっぱい)はこの家の女で一番大きいんだけどな、見てみる?」

セーナ「I’m just kiddin’ you know?」
高橋「わ、私は部屋に戻ってタバコを取ってこようと思います。」
部屋に戻った高橋はリビングに戻る前に、浮ついた心を落ち着かせようと自室でタバコを吸った。しかし休息を遮るように、来客が現れた。
ドアに目を向けるとセーナがウィスキーボトルを抱えて立っていたのだ。
セーナ「ここで飲もうよ、ダメ?」
1巻P59まで
今回はここまで、それじゃあへばの!
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